再び日付詐称

 いやはや、今日はもう大変でしたわ。仕事が終わってさあ帰るかーと思ったら友人から連絡が入りまして。頼むから来てくれと言うそれはそれは切羽詰った声の要請に負けて友人宅へ行ってんけど・・・・・・いやー修羅場でしたわ。うちはなぜかその友人宅の鍵を持ってるんで普通に鍵を開けて部屋に入ったらあなた。もうドラマの世界、昼ドラの世界が広がっておりましたがな。

 必死にオンナを宥めてる友達2人、そして包丁を手に自分の首を切ろうとしてるオンナ。もう目が点で思わず開けたドアを閉めてしまいそうになりましたよ。しかし友人の一人がうちに気づいてそれも遅く。オンナはうちを見ると「これがあんたの好きな人なの!?こんなのが!?」と叫ぶ叫ぶ。えー、うちはどういう役目でここに呼ばれたんでしょうか。状況を掴むために当事者では無さそうな友人の方に目で「おら、説明せんかい」と脅すとオンナから目を離さずに説明してくれましたわ。

 どうやら、このオンナは友人と付き合ってた人で最近別れたんだそうな。でもオンナの方は諦められんくてずっと友達としてって感じで傍におったんやと。もしかしたら元の鞘に戻れるかって一縷の望みを抱いて。そやけど友人にはそんなつもりなくって、反対に他の女と喋るたびに彼女みたく嫉妬するオンナに嫌気がさしてたらしい。ああ、それは完璧に作戦失敗だで、オンナ。んで、今日友人と部屋で酒を飲んでる所にこのオンナが乗り込んできてどうして自分じゃいけないんだ、友人と一緒になれないんなら死んでやると包丁を手にしたそうな。ほほー。で、どうしてうちが呼ばれたのか。「おまえはいろんな修羅場知ってるだろ、なんとか出来ないかと思って」・・・・・・おいおい。説明を聞きながらオンナはうるさいとか喋るなとか喚いててそりゃもう手がつけられん状態になってんのにこれをうちになんとかしろと?男2人揃ってんのにうちに頼るってどういうこっちゃねん。

 縋るような目で見られちゃ放ってもおけんしねぇ。しゃあないんでオンナから目を離さずに部屋の中に入ってダイニングにあるイスに座った海月さん。さて、ここからどうするべか。とりあえずオンナの様子を観察しましょう(え)。結構美人さんタイプで出るとこ出てる羨ましい体型ですな。爪もきれいに手入れされとるし化粧も夜遅いっていうのに崩れてない。うーん、羨ましい。なんてジロジロと見てたらオンナに「あんたなんなのよ!」と怒られてしまいました(笑)。きっとこのオンナも必死やねんろーな。ほんまに友人のことが好きで好きで、でもその気持ちは一方通行で。曲りなりにも身体を重ねて同じ時間を過ごした事のある相手やからこそ諦めもつかんのやろうなぁ。でもやり方はよろしくないねんよねぇ。こういう事やっちゃったら相手はますます引いちまうもんやし。じっくりと見てるとオンナの手がちょっと震えてるって言うか包丁が震えてるんがわかってん。それを見てなんやかわいそうになってしまったわ。でも、こういう相手には同情しない海月さんなので。言っちゃいました。「やるならさっさとやれば?」って。ああ!ひどい奴です、わかってます!友人2人もなにを言ってるんだとワーワー喚いてましたよ。オンナも一瞬ビックリしてすぐに「言われなくてもやるわよ!」と返して来たけどもちろん包丁は動きません。

 本気で死ぬつもりがあるんやったらこんなにグズグズしたりはせんからね。オンナとしては止めて欲しいわけさ。それも好きな男におまえと付き合うからやめてくれとでも言ってほしいわけなのよ。そんな言葉が出て来るわきゃねーのにね。なのでうちは淡々と事実だけを喋りました。確かにここで死んだらこいつは一生忘れない、どんな女と一緒にいてもあんたのことは忘れないってこと。でもそれは愛じゃなくて後悔、後ろめたさから忘れられないだけ。そんでもって首に包丁突き立ててるけど上手く切らないと死ねないこと、苦しむだけ苦しんで結局死ねないこととかいろんなことを。話す事約3時間。結局うちがオンナの包丁を取り上げて事態収拾つきましたわ。

 で、オンナの気持ちをきちんと終わらせてあげなあかんから友人に今の気持ちをちゃんと話させて。その間うちは携帯でメールしててんけど、話してる最中にまたオンナの気持ちが向上しちまって。深夜に人の修羅場を宥めるってほんまに大変ですよ。全く、男2人もおって情けない。とりあえずこのオンナの事はこれからうちが様子を見る事になりそうっす。リハビリせんとね。ゲイ友達やニューハーフの友達と会わせてみようかなーと考えてたり。ノンケはしばらくご法度で。今日はオンナの友人に迎えに来てもらって帰ったんで明日くらいからちょっと頑張ってみましょーか。

 オンナが帰った後、「さすが海月!おまえがいてくれて助かったー!」と満面笑顔になる友人2人には数発ずつ鉄拳を入れておきました(笑)。こいつらも今度鍛えなおさんとあきませんかね。ほんまにこういう修羅場にうちを呼び出すのはやめて欲しいもんですよ。今回は上手く行ったけど次も上手く行くかなんてわかりゃしませんからね。ってか、正直こういう事態に慣れたくない・・・・・・(笑)。