「館」なのになぁ。

暗黒館の殺人 (上)
綾辻 行人


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 やーっと読み終えたよ。10年振りの綾辻行人「館」シリーズ最新刊。上下巻に分かれてて総ページ数1293ページのこの「暗黒館の殺人」は「館」のファンとしては待ちに待った新刊やったわけやけど・・・・・・言うてええかしら。綾辻氏、10年待たせてこれはちとキツイですわ。上巻読みながら「視点」の飛び方に訳わからんなるわ「館」特有のパズル的な謎はわかりにくいわ、読むのを放棄しそうになりましたよ。綾辻氏が渾身の力を込めて執筆した作品に対してうちみたいなペーペーがこんなん言うなんて失礼かもしれんのやけど・・・・・・「館」のあの雰囲気を楽しみにしていた立場としてはガクーンです。
 下巻を読んでますます訳がわからんくなりながら「一体綾辻はこれをどういうつもりで館シリーズとして出したんやろ」って真剣に悩んだわ。「館」シリーズと言えば、中村青司が建てた不可思議な館で起こる人智を越え悪意にまみれた事件の連続やってんけど・・・・・・この暗黒館はちと違うんよな。ミステリっていうよりホラーファンタジーに近いんやないかな。これに近い作品ってことで上げれば井沢元彦氏の「猿丸幻視行」。過去と現在が混濁した視点で過去がメインでストーリーは進んで行くってのはそのものって感じやわ。完成度では全然追いつかんけどね。
 最後まで読んでやっとこの「館」の意味が掴めて「ああ、そう来たのか。なるほど、だからこんなに長くて謎が多いもんになったんやな」って理解出来た。確かにどうして彼がああなったのかってことを説明するためには必要やったかもしれんな。「ダリアの祝福」を受けた彼がどうしてあんな事件を起こしたのか、どうして彼はああまでしてそのことに固執したのか、全てを読み終わってやっと理解出来たわ。そやけどやっぱ長い。途中引き伸ばしすぎじゃないのかと溜め息吐いた箇所も何ヶ所かあって悪いけど流し読みしちまった。
 なんやえらく酷評してもうたけど、ミステリとして読むんやなくてファンタジーとして読めばそれなりにおもろいしお勧めの一冊ではあるんよ。「館」ファンのうちとしては物足りなかっただけで、ね。うちは愛蔵版の別冊で言うてたように綾辻氏の次の「館」に期待しますわ。ホラーファンタジーとしての「館」やなくてミステリとしての「館」を届けてくれる事を・・・・・・。

 綾辻氏の「館」シリーズはこちらでどうぞ。

■追記■
 「館」シリーズを再開するに当たってふと懸念した事があったので書いちゃいます。
 綾辻氏、この暗黒館を伏線にして今後の「館」シリーズでまさか「青司が実は・・・・・」なんて事ないでしょうな。いや、やって最後があんな終わり方やともしかして、なんて思っちまったもんで。もしそういう話を書く時は「館」シリーズやなくて「囁き」シリーズで出すか「館−外伝−」とでもして下さいませ。やはり「館」シリーズはミステリであって欲しいと思う館ファンですのよ、うちは。あ、でも青司自身に第三段階の“成就”が成されていなければありえない話か。ダリアの血を引く浦登家の人間やない青司が第三段階をクリアするわけないもんな、やっぱいらん心配かも。って玄児もそうやったな。でもまさか青司もだなんてことは・・・・・・うーん。まあ無いだろうという事にしとこうと思いますわ。なんて安心してたらどんでん返し食らうんだよなぁ、綾辻作品は。